管理物件の女 (前編)

 

そこは暗い部屋の中でした。

部屋の窓には木の板が張られ、中の様子は外からは見えません。

電気の通っていないその部屋には明かりはなく、かわりに懐中電灯のライトの光が、部屋の中を照らしていました。

時間はもう深夜の2時を過ぎているでしょうか。

私の大事な恋人である真悠子は、懐中電灯の薄明かりの中、床に敷かれたジャンパーの上で四つん這いの格好になっていました。

真悠子の後ろには中年の男性がいました。白いシャツ一枚になった男性は、不安定な中腰の姿勢で腰を浮かせたまま、真悠子の腰を抱えて息をはずませています。シャツの下から中年男性の太ったお腹がのぞき、そしてその男性の毛深い下腹部の下には、固く屹立したものがそそりたち、それは真悠子の女性の部分に出たり入ったりを繰り返していました。

 

真悠子は腰にベージュのスカートが残っているだけのほとんど全裸の姿になっていました。

中腰の姿勢で腰を浮かせた男性は、ベージュ色のスカートをまくりあげられて丸出しになった真悠子のお尻を抱えて後ろから挿入し、息をはずませながら早いペースでかくんかくんと腰を動かしています。真悠子の白いパンツは左足のスニーカーのところにひっかかり止まったままで、白かったパンツは埃だらけのコンクリートの上でひきずられて汚れてしまっています。

男性の息づかいと、下半身がぶつかるぱんぱんという音、そして真悠子の漏らす「んっ、んっ」という声が響く中、懐中電灯の明かりの中に真悠子のあらわになった上半身が映し出され、真悠子の胸がときおり男性の手によってもまれる様子が見えます。

そして息をはずませていた男性が「んふっ、んふっ、おおぉー」という声とともに動きを止め、真悠子の中にこの夜二度目の射精がおこなわれました。

男性が自分のものを引き抜き、行為の終わった余韻を味わう間もなく、懐中電灯を持っている男性が自分の番を催促します。その背の高く髭の生えた細身の男性は懐中電灯をとなりの男性に渡すと、射精を終えた中年男性に変わって真悠子の後ろに立ち、かちゃかちゃとズボンのベルトを外しだしました。

 

部屋の中にいる男性は四人。そして背の高い男性はうずくまった真悠子の胸をもみしだき、振り向かせてキスをしたかと思うと、床に敷かれたカーデガンとジャケットの上に真悠子を仰向けにし、真悠子の足を開いて挿入しました。これで部屋にいる男性全員が真悠子と結ばれたことになります。

男性全員。たった一人、がくがくと震えながら股間のものを握っている私を除いては。

私はすでにズボンを下ろして下半身が露出した情けない姿になっており、「真悠子、真悠子」とつぶやきながら自慰行為を繰り返していました。けれどももう3回も射精してしまった後では、射精感だけで出るものも出ず、かろうじてたった一滴がぴゅっと出るとともに奇妙な射精の興奮で私は高揚してしまっていました。もう男性たちも私を押さえつけたりする必要のないことをわかっていて、私が自慰行為をしてこの住む人のいない部屋の床を汚すのをそのままにしています。4人の男性が次々に真悠子と結ばれ真悠子の身体の中に射精していく中で、私の精液だけが、この砂埃で汚れた廃屋の床の上に空しく発射され落ちていました。

私達は無理矢理この誰もいない建物の中に連れ込まれたわけではありません。

むしろ逆で、私と真悠子は自分たちからこの建物の中に入ったのでした。

けれども、30分ほどで出てくるつもりでいたこの建物の中から、私達は2時間以上も出ることができず、そして出て来た時には、真悠子は4人の男性の精液を子宮の中に受け止め、取り返しのつかないことになってしまっていたのでした。

 

私達が体験した寝取られセックスの中でも、一番大事なセックス、私達が結婚するきっかけとなったセックスについてお話ししたいと思います。

 

それは私達が24歳の時、季節は春のことでした。

桜も散り、連休も終わり、夜になっても肌寒くない時期になった頃、私達は夜の散歩に出たのです。

そこで、私はいけない出来心を起こしてしまったのです。

そして、その出来心を押さえることができませんでした。

 

私達は、10代の頃からの恋人同士でしたが、お互いが21歳の時に真悠子が浮気をして他の男性と一夜を過ごしてしまったことがきっかけで、寝取られの性癖に目覚め、私公認で他の男性たちに真悠子を抱いてもらうプレイをするようになりました。けれども、真悠子の可憐さと、私達の若さのせいで、刺激を求め過ぎた私達は自分たちを守ることができず、男性たちに何度も中出しされた真悠子は望まない妊娠をして中絶を経験したのです。

それでも、私の性癖はおさまらず、また真悠子が妊娠と中絶を経験したせいで、そのことでさらに私は妄想に悩まされるようになり、そして真悠子も男性たちとのセックスの楽しさを拒むことができなかったのか、ピルを服用してさらにハードなプレイをするようになってしまいました。男性たちはすべて中出しで、真悠子は3、4人の男性と一晩中セックスをして、朝までに数えきれない射精を中にされるというプレイを何度も行ったのです。

けれどもその後、性病に感染してしまうと、私達は冷静になり、自分たちがいかに危険なことをしていたことに気が付いたのです。そして、私達はふたたび仲の良い普通のカップルとして、普通の性生活をするようになりました。

 

私達が結婚を意識するようになったのもこの頃です。

元々、学生だった頃からお互いに将来を誓い合った恋人同士でしたので、いずれは結婚するつもりでしたが、そのことを具体的に考えて、その時期や人生計画について話し合うようになったのはこの頃でした。

普通の性癖の人たちや、普通のカップルから見るとおかしいかもしれませんが、二人とも裸になって男性たちと何度も激しいプレイを経験し、それらの経験を二人で乗り越えると、私達は以前にもまして仲の良い恋人同士になっていました。

そして、この時の二人だけで愛し合う静かな生活は、とても幸せなものでした。

けれども、心のどこかでは、私の妄想はいまだに渦を巻いており、私は真悠子のいない時には、それまでのプレイで撮影した真悠子の裸の写真や、真悠子が何人もの男性とセックスしてしまうビデオを見て、興奮してオナニーしていたのです。

そして真悠子が男性に中出しされる様子を見て、真悠子が他の男性によって妊娠させられることを想像し、私は言いようのない興奮と快感を覚えていたのです。

そう思うと、ある意味ではこの日の事件は、私の妄想と願望が、すべて実現してしまった出来事だったのです。

ただ、それが予定外のタイミングで起こってしまったというだけでした。

 

私達はこの事件の前にも、そして結婚してから今までも、たくさんの男性たちといろんなプレイを体験してきました。

ワゴン車の中で5人の男性に真悠子をまわされてしまったこともあります。

雑居ビルの非常階段で会ったばかりの男性に真悠子に挿入されてしまったことがあります。

雨の日、夜の川原で4人の男性と、ずぶぬれになりながら真悠子はセックスをしてしまいました。

けれどもそれはすべて、半ば合意の上でおこなったプレイです。

本当の意味で、見ず知らずの男性に偶然にレイプされたと言えるのは、私達にはこの時だけでした。

もっとも真悠子にとっては、それは覚悟の上での同意のセックスかもしれません。

そして、それは私達にとっていちばん忘れられないセックスのひとつなのです。

 

 

当時、私達が同棲していたマンションは、駅から少し離れたところにありました。
首都圏からいくぶん離れた、ベッドタウンとも呼べる地域でしたが、少し駅から離れてしまうと、とたんに寂しくなり、お店の明かりも少なくなりました。

普段はバスを使って通勤するのですが、時折、私はバスを使わずに、30分ほどかけて歩いて自宅に帰ることがありました。

その途中で、私はあるものを見つけたのです。

それは、倒産した会社の事務所か何かの、打ち捨てられた建物でした。
敷地にはゲートが閉ざされ、その門のところには「管理物件」と書かれてしました。
おそらくは倒産した会社のオフィスの跡地を、どこかの不動産業者などが管理しているのでしょう。
建物はさびれて敷地には草が生い茂り、そして窓には木の板が張られていました。

どのくらいの間、この建物は放置されているのでしょうか。
その、どことなく荒れて、寂しい雰囲気に、私はぞくっとし、そして、知らない間に、心の中のある部分を、刺激されていました。

そこは、駅から自宅へ帰るための、車の通る道に面しており、近くにコンビニもありましたが、その前を何度も通るたびに、次第に私の中では、ある妄想が膨らんでいたのです。
それは、その誰もいない寂れた建物の中で裸にされ、見ず知らずの男性に犯される真悠子の姿でした。

 

真悠子に何を言って、どういった経緯で一緒に夜の散歩に出たのかは覚えていません。
けれども、コンビニに行くような気軽な感じで、私と真悠子は家を出ました。
そして気が付けば家から15分ほどの箇所にあるその建物の近くに、私達は来ていたのです。

真悠子はラフな格好のままで、私について来ましたが。真悠子は私がエッチな下心が目的で誘い出したことは当然わかっていたと思います。今までに何度も一緒にエッチなプレイをしてきているので、私が妄想でむらむらとしていることはきっと真悠子にも伝わっていたでしょう。でも真悠子はそれに応えて、どこかでエッチな行為をするのだという暗黙の了解で、真悠子は私と散歩に出かけたのです。

「着替えるから」と言って、真悠子が準備に時間がかかったので、家を出たのは11時過ぎになりました。

誰に会うわけでもないこんな夜の散歩でさえも服装に時間をかけるのだから、女性というのは人目を気にする面倒な生き物だと思いましたが、今思うと真悠子はきちんと私を喜ばせるために準備をしてくれていたのでした。私が派手に着飾る女性が苦手なのを知っているので、全体に地味にしながらも、部屋着のショートパンツから、春らしいベージュのスカートに着替え、下着のパンツも新しいものに変えていました。そして薄い水色のタンクトップの上に白いブラウスを着て、紺のカーデガンを羽織って真悠子は出て来ました。

私達は15分ほど歩き、コンビニの少し手前にある、その管理物件のそばに差し掛かります。そこで私は足を止めました。

「ここに入りたいんだけど、いい?」

私が言うと、真悠子は、ええ~という顔をしましたが、私がそわそわしながら建物を眺めているのを見ると、観念したように頷き、手をつないで敷地に入ったのです。

管理物件と書かれて、黄色いロープが張られてはいるものの、入口の折りたたみゲートは普通に開いたので、敷地への出入りは簡単でした。昼間なら怪しまれるかもしれませんが、夜になればこの辺りは人気もなく、人に見られる心配もほとんどありません。

敷地に入るのは簡単でも、建物の中に入るのは簡単ではありません。私がどきどきしながら建物を眺め、どこから中に入ればいいか考えていると、唐突に真悠子が「トイレに行きたい」と言い出し、私たちはいったん敷地から出て近くのコンビニに向かうことになりました。

女性というのは、どうして肝心な時にいつもトイレに行きたくなるのでしょうか。それとも、これから下半身をいじられることを真悠子は察知して、その前に用を済ませておきたいと思ったのでしょうか。

張られている黄色いロープをくぐり、私達はいったん敷地から出て、道路を隔てたコンビにに向かいます。人通りはなく、敷地のゲートを出る時にも、誰にも見られていないと思いました。

 

コンビニに向かうと、コンビニの駐車場にトラックが二台停まっていました。
トラックの中に、作業服を来た男性二人組が寝ているのが見えました。
おそらく、仕事の合間に仮眠を取っているのでしょう。あるいは翌朝からの仕事に備えているのかもしれません。

もう一台のトラックの中にも男性が二人乗っていましたが、こちらはもう少し若く見えました。

そのトラックの助手席に乗っている髪を茶髪に染めた男性と私は一瞬、目が合いましたが、私は気にせずコンビニに入り、用事を済ますことにしました。

真悠子がトイレに入っている間、私は雑誌を立ち読みしていましたが、しばらくして真悠子がトイレを済ませて出てくると、私はあることに気が付きました。それは、コンドームを忘れてきたということです。

私と真悠子は、その頃一年ほど、コンドームを付けてセックスをしていました。
それは、性病にかかった後、病気を治すための理由もありましたが、今では他の男性とのプレイもしなくなったので、真悠子も身体への影響を心配してピルを飲むのを止め、コンドームを使ってセックスしていたのです。

それまで数年の間、他の男性にされる時でも生でセックスし、中出しするセックスに慣れてしまったので、コンドームを使ったセックスは少し刺激が足りませんでした。けれどもコンドームを付けてから挿入する一連の儀式は逆に新鮮で、私達はコンドームを使った二人だけのセックスを楽しんでいました。

けれども、こうして家の外でセックスをするのは久しぶりのことだったので、私はコンドームを持ってくる必要があることをすっかり忘れていたのです。

私は照れもあって、真悠子を入口で待たせると、一人でコンドームを買い、レジで会計を済ませました。

その時たまたま、トラックに乗っていた先程の茶髪の男性がコンビニに入ってきました。

男性は真悠子のとなりを通り過ぎると、すぐに店の奥の方に行きましたが、それはちょうど私がレジでお金を払っているタイミングでした。私が何を買っていたか、その男性には見えていたかもしれません。

品物を受け取って真悠子と一緒に店を出るとき、気になって振り返ると、雑誌を立ち読みしていたその茶髪の男性と露骨に目が合ってしまいました。偶然ではありません。男性は私と真悠子のことを見ていたのです。

私は少し不穏な気持ちになりながらコンビニを後にしましたが、今から考えると、私は無意識のうちにその男性に無言のサインを送ってしまっていたのかもしれません。私の心には確かに隙があったのです。本当に真悠子の事が心配であれば、人気のない場所に行ったりせずに、その後まっすぐに家に帰っていたはずだからです。二人だけのセックスなら、自分たちの部屋でもすることはできます。

けれども現実には私は変態的な下心をおさえられず、私は真悠子を連れてまっすぐ道路を渡り、コンビニから30メートルほどの距離にあるその建物の前に来ると、きょろきょろと辺りを見回して誰もいないのを確認し、折りたたみゲートを開けて、その「管理物件」と書かれた看板のついたロープをくぐって入っていったのです。その様子が、トラックの運転席やコンビニの店内から見えていたかどうか、振り返って確かめる勇気は私にはありませんでした。そして、この時点ですでに私の喉は緊張と興奮でからからになっていたのです。

 

建物の周囲を歩いて入口を探しながら、私は真悠子の手を引いて、誰もいない敷地内を歩いていました。正面の玄関はやはり鍵がかかっており、また窓にも木の板が張られて、入ることは出来なさそうでした。人の気配はないものの、ここは本来入ってはいけない場所で、私達がしているのは不法侵入です。夜の静かな空気の中、もし誰かに見つかったら、ということを考えて、私の緊張はさらに高まりました。けれども何かを期待する下心は私の中でいっぱいになっており、私はこのまま建物の陰で真悠子の服を脱がせてしまおうかという思いに駆られました。誰もいない放棄された建物の陰で、真悠子を脱がせていたずらすることは、私の妄想を十分に満足させるものでした。けれども建物を一周すると、私達は、そこに階段があることに気が付いたのです。

階段は建物の外側にあり、事務所の二階につながっているようでした。おそらく一階は倉庫か作業所のようになっており、二階は事務所だったのではないかと思いました。私達が階段を登り、二階の入口のドアに手をかけると、それは普通に開いてしまいました。誰もいない事務所の部屋。中はがらんとしており、思ったよりも声がよく響きます。窓は木の板でふさがれているので、中は真っ暗です。けれどもしばらく見ていると、板貼りされた窓のすき間から差し込んでくる夜の光で、なんとなく室内が見えるようになりました。

床はコンクリートで、床板や絨毯などもすべて取られていました。事務所は何部屋かに分かれていましたが、むき出しになったサッシや柱があるだけで、何もない空間は意外と広く感じました。私は携帯電話を取り出すと、携帯の出すわずかな光で辺りを照らし、扉をあけて次の部屋に入ってみました。

二番目の部屋は応接室か何かだったのでしょうか。狭いスペースですが、両側の壁が木目調になっており、少しだけ落ち着いた感じです。ひとつだけある窓はやはり木の板でふさがれていましたが、板のサイズが合わないのかすき間が多く開いており、外の街灯の光がそこだけ入ってきていました。おそらくはここに立派なソファーや机が置いてあったのでしょうが、今ではすべて取り払われて何もなく、漏れてきた光だけが寂しそうに木目調の壁をそこだけ照らしています。私達は自然と光が入って明るくなっている窓際に行き、そしてどちらともなく寄り添いました。

真悠子がしなだれかかるように私に体重をあずけ、上目づかいになった真悠子と目が合います。私はそれでもう限界になり、両手で真悠子を抱きしめると、真悠子の身体をまさぐりはじめました。私の手は自然に真悠子の腰に伸び、真悠子のお尻をスカートの上からまさぐると、すぐにスカートの中に入って真悠子のお尻の感触をパンツごしに楽しみました。私は真悠子にキスをし、情熱的に抱きしめると真悠子も応えて私の舌に自分の舌をからませてくれます。キスに応えて身を任せてくれている真悠子の様子に、私の中で熱いものがこみあげて来ます。私と真悠子は、今からここでセックスをするのです。

 

私はたまらなくなり、すぐに真悠子に入れようと真悠子を後ろ向きに立たせ、壁に手を突かせた姿勢にしました。真悠子は壁に手をついたまま背筋を伸ばし、お尻を突き出した姿勢になります。真悠子は私が立ったまま後ろから入れるのが好きなのを知っています。そして私がお尻が好きなことも知っているので、真悠子は私が興奮するように、いちばん可愛らしく見えるほどよい角度でお尻を突き出す姿勢になってくれます。私は期待と興奮の絶頂になり、さきほどからの緊張も相まって、心臓がばくばくと鳴り、膝をがくがくさせながら、真悠子のお尻にむしゃぶりつき、そして少しずつ、少しずつ、真悠子のパンツを下ろしていきました。真悠子が真新しい白いパンツを履いてきてくれていたことに気付いたのはこの時です。私がずり下げた真悠子のパンツはすすっと落ちていき、足首のスニーカーのところで止まります。真悠子が足を開きやすいようにパンツから片足を抜かせて、白いパンツは真悠子の右の足首のところで引っかかったままになりました。パンツだけは下ろしますが、他は脱がせません。私は真悠子を全部脱がせずに、服を着たままスカートをまくりあげて挿入するのが好きなのです。そして挿入したまま後ろからブラジャーをずらして胸をもんだり、乱れた真悠子を振り向かせてキスをするのが好きなのです。

 

私はかちゃかちゃと音をさせてベルトをはずし、ズボンを下ろすと、先程買ったコンドームを取り出し、開封して装着しようとしました。開封するのももどかしくてたまりません。外装のビニールを剥がし、箱を開け、中のコンドームをひとつだけ取り出して開封します。コン、コン、という物音が聞こえたのは、その時でした。

それは、誰かの足音のようでした。私は背筋が凍りました。静かでがらんとした部屋の中、コンクリートを伝わって近づいてくるその音は、誰かが階段を上がってくる音だと、音の感じでわかりました。

ぎぎぎ・・・長い間使われずに放置されたドアがきしみながら開く音が聴こえます。ついさっき、私達も聞いた音です。

「お、なんだ開くじゃん」

男性の声でした。声は若く聞こえます。

「やばいな。入っていいのか?」

もう一人の声が聞こえました。

男性が二人いるということでしょうか。

ドアが開く音がした瞬間から、真悠子も身体をこわばらせ、私達は抱き合って、ただただじっとしています。

見つかったらどうなるか、とか、この声の主が誰なのか、とかそういうことは考えられません。

ただただ、この状況でこんな場所で見つかるのがまずいのです。

放棄された建物に不法侵入し、男女ふたりきりで、しかも私はズボンを下ろして下半身を露出させてしまっています。

部屋をしきる壁の上のすき間から、懐中電灯の明かりが動くのが見えました。
部屋の壁は木目調の塗装がされていますが、実際はアルミ製のパーティションにすぎないので、上の方にはすき間があり、そこを通じて彼らの声もはっきり聞こえました。

「誰もいないな」

彼らは電灯の光で部屋の中を照らし、中の様子を見ています。

「もういいんじゃない? 戻るべ。誰もいないって。」

そう言う声がしましたが、もう一人の方は納得していないのか、もう少し見てみるといった気配で、事務所の中に入ってくる足音が響きました。

こつん、こつん、足音がするのは、薄いパーティションを隔ててすぐ向こうです。その足音の近さに、私の動悸は高まり、そして唾をごくんと呑み込みました。唾を呑み込む音が相手に聞こえてしまったのではないかと、私は不安になります。目の前にあるドアを開いて、男性が入ってきたら、私達はどうすればいいのでしょう。どういう顔をして、どういう言い逃れをしたらいいのでしょうか。足音が止み、足音の主が壁を隔てたすぐそこにいるのがわかります。私は心臓がばくばくと鳴り、その音すら壁の向こうの男性に気付かれてしまいそうです。

 

その時、不意に真悠子が身体を曲げて、手を下に伸ばしました。
私は真悠子が何をしているのかわかりませんでしたが、次の瞬間、私は驚いてしまいました。
真悠子は、足首のところまでずり落ちたパンツを履き直そうとしていたのです。

こんな、物音ひとつたててはいけない状況で、どうして身体を曲げてパンツを履かなくてはいけないのか、私は頭の中が疑問でいっぱいになりました。けれども、声を出すこともできないので、止めることもできません。

腰をかがめた真悠子が、白く長い足をすっと上げてパンツを履き、ずり上げます。

真悠子はそれを上手く音をたてずに行いましたが、パンツを上まで上げて安心したところで真悠子は足を戻し、そのとき真悠子は足下近くに落ちていたコンドームの箱をを踏んでしまいました。

かしょん、という、紙製の箱がつぶれる不思議な音がしたのと、「あっ」という真悠子がびっくりしたような声を出すのがほとんど同時でした。

 

(中編へ続く)

 


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