不思議な力を持った少女は敗北と寝取られの戦場へ向かう

 

 

これは新作寝取られ小説「覇王の国の寝取られ女王 -戦国NTR- 血で血を洗う弱肉強食の世界で愛と寝取られのために戦う勇者の物語」の冒頭、第一章にあたる部分です。

 

 

    Love is more destructive than weapon.

      ―愛はどんな武器よりも破壊的である

                  (英智国の諺)

 

 第一章 女王国

 

 キーン!

 剣と剣がぶつかりあう鋭い音が響く。

 かと思えば、今度は幾度もの金属音と、地を蹴って飛ぶ衝撃音が連続して打ち鳴らされる。

「山の戦士」同士の打ち合い。

 普通の人間には目で追うことも出来ないほどのスピードだ。

 

 ここは女王の国の訓練施設。

 ミツカとランドは、軍の剣術場を貸し切って、二人だけの訓練を行っていた。

 それはミツカが軍でも第二の地位にある将軍だから出来ることである。

 

 ミツカが試合の相手にランドを選んだのは、彼が仲の良い幼馴染みだからというだけの理由ではない。

 女王国を守る「山の戦士」

 その中でも歴代最強と言われる戦闘力を持つミツカ。

 そんなミツカとまともに手合わせが出来るのは、もう国中探してもランドしかいないからだ。

 だが、その事を理解している人間は少ない。

 ランドは、軍の上級戦士の位は持っているが、その中での序列はもっとも低い。戦略会議での発言権も小さい。

 それは、ランドが争いが嫌いな性格で、戦いの中で決して本気を出さないからである。

 

 ランドが本気を出すのは、ミツカが相手の時だけだ。

 いや、あるいはミツカを相手にしても、まだ本気ではないのかもしれない。

 いつもの通り、ランドはミツカの本気の剣戟を、すべて確実に受け流している。

 どんなに屈強な男であっても名前を聞いただけで恐れをなす最強の女戦士を相手にしているにも関わらず。

 その様子はまるで、父親が幼い子供の遊びに付き合っているような印象すら受ける。

 

「ちっ!」

 苛立ったミツカは、さらにもう一歩踏み込んだ。

 防御は考えず、自分の限界の速度で攻撃を繰り出す。大事な友人であるランドを殺すつもりで連撃を繰り出した。

 ぱぱぱぱ、ぱん。

 なぜだろう? ランドは笑っている。

 本気で攻撃したつもりなのに、彼を殺してもいいというくらいの気持ちで打ち込んだのに、ミツカの剣はすべて弾かれ、ランドにはかすりもしない。

 違う、逆だ。いくら打ち込んでもランドを傷つけられる気がしないから、ミツカは本気で打ち込むことが出来たのだ。

 

 届かない……。

 ミツカの足が止まる。

 恐るべき反応速度で0.001秒の後にはランドも止まった。ミツカのすぐ前に。

 

「どうした? もう止めるのか、ミツカ?」

「やってられるか、なめやがって。攻撃して来いよ、ランド」

「いやあ、お前の攻撃が速過ぎて、防ぐのが精一杯だったのさ」

 

 この男は本当にわからない。幼馴染みとして小さな頃から共に育ち、共に剣の練習をして、同じように戦士になった。だがミツカは未だに、ランドが何を考えているのかわからない時がある。たとえば……。

「なあランド、お前は妻を娶らないのか? 上級戦士で、同じくらいの歳の男たちは皆、妻をもらっているだろう?」

 訓練用の革製の防具を脱ぎ、手縫いのタオルで汗を拭きながら、ミツカはランドに聞いた。

「前にも言わなかったか? 俺は女には興味がないんだよ。男勝りな誰かさんを見て育ったおかげでな。それに、上級戦士って言っても、お前の従姉妹のリルカ姉さんだって結婚してないじゃないか。もったいないよな、別嬪さんなのに」

「軍の最高責任者ともなると、結婚相手を探している暇もない。それにリルカ姉さんは、私以上に性格が激しい。客観的に言って、あの脳筋女を妻として娶ろうという男はいないだろうな。たとえ美しくとも、身が持たん。持つ男がいるとすれば、お前くらい……」

 そこまで話してミツカは言いよどんだ。

 あの豊満なリルカの体を、ランドの腕が抱くところを想像してしまった。

 自分の想い人を、軍の上司でもあり、ライバルとして常に比較されてきた従姉妹に取られるなんて、言葉にだってしたくない。

 

 ランドはどう思っているのだろう。

 剣術の訓練と同じように、ミツカはもう一歩、踏み込んでみようと思った。

 防御のことは考えず、死ぬ気で攻撃を繰り出す……

「ラ、ランド!」

「何だ、ミツカ?」

「私を妻にしろ!」

「何だ、いきなり」

 ランドは笑っている。その顔は、さっきと何も変わらない。ミツカの本気の攻撃は、さきほどと同様、あっさりと受け流された。

 

「ちゃんと聞け。私は本気だぞ、ランド! もう一度言う。私を妻にしろ」

 ミツカは自分がまるで小さな娘のようだと思った。まるで父親に駄々をこねるようにして、顔を真っ赤にしてわめいている。

 ランドは仕方ないな、というように振り向いてミツカに向き合うと、指先でミツカの鼻をちょん、とつついた。

「お前が結婚できない理由は、お前自身が一番よくわかっているはずだろう?」

 そう言ってランドはくるりと向きを変え、剣術場を後にしてしまった。

 

(でも……でも……)

 ミツカは自分の持つ「特別な力」が疎ましかった。国を守るために、その力は必要かもしれない。だが……

(戦いなんかよりも、お前の妻になる方が私には大事だ、それに……)

 ミツカの目からは涙が溢れ出した。

「私はお前のことを本当に愛しているんだ!」

 最強の女戦士が涙を流し、大声で叫んで愛を告白した。

 しかし、その涙を見る者はおらず、その言葉を伝えたい相手は、既にその場を去った後だった。

 

 

 ミツカは戦士の家系に生まれた。

 代々、「山の戦士」として女王国を守る使命を帯びてきたミツカの家だったが、不幸にして両親は男児に恵まれなかった。

 しかし、この女王国では女でも政治に携わり、軍人として戦うこともある。

 あまりにも華奢で整った赤ん坊の顔立ちを見て、この子は美人になると思った両親は、この子が戦士ではなく、普通の女として生きられるよう、「平穏で静かな人生」という意味の名を付けた。

 しかし皮肉にも、成長するに従ってミツカは戦士としての素養を見せるようになり、幼い頃から剣術の試合で勝ち続け、そして「山の神託」を得た後は念動力を身に付けた最強の戦士となった。

 それは幼馴染みのランドという優れた練習相手がいたからでもあったのだが、そんな二人の関係を理解している者は、軍の中にも少ない。

 

 その二人、ミツカとランドを含む上級戦士たちに今夜、招集がかかっていた。

 招集の理由は国防のための軍略会議だ。

 この和の地と呼ばれる細長い島国。その最北に位置する女王国に、今、危機が迫っていた。

 この数年、中央で勢力を伸ばしている覇王アレイクの軍勢が、この女王国に攻め込もうとしているという情報を、忍びの者たちが伝えてきたのである。

 この女王国は、戦乱の世にあって、他の国々とは切り離されている。

 それは、和の地の中でも最北に位置するという地理条件のせいもあるが、それ以上に政治や文化が違うからだ。

 武将たちが群雄割拠し、戦を繰り返し、殺し合いが続く和の地の中で、この女王国のみが平和を愛し、文化を発達させ、他にはない繁栄を築いている。

 それは女王を中心とした政治の賜物だったが、この国に生きる者は皆、この女王国が特別な国であることを誇りに思っていた。だからこそ国を守るための軍も強力に整備され、そして他国との交流も極力断っていた。

 

 そんな他とは一線を画する「繁栄する辺境」であった女王国に、中央の軍勢が攻め込んで来ようとしているのである。

 たった数年で、和の地の八割を手中に収めたと言われている覇王アレイク。

 その手腕は残虐そのもので、伝わってくる噂はとんでもないものばかりだった。

 

「覇王アレイクって奴は、歯向かった敵は絶対に生かしておかない残虐なやつらしい。なんでもな、敵の総大将を殺して、そいつの頭蓋骨を盃にして酒を飲むんだそうだ」

「そいつは悪趣味だな」

 会議に向かう道すがら、ミツカはランドにこれから戦う相手についての情報を伝えていた。情報といっても今の時点では噂話くらいしかない。だがそれでも相手の特徴はつかむことが出来るし、それにくだらない話でもしていないと、間がもたない。ミツカは、さきほど自分がランドに結婚を申し出たこと、そしてそれを無下にされ、涙を流したことを思い出したくなかった。会議を前にして、平静に戻らなければ。

「しかも覇王は、敵国を攻め落とした後、戦って倒した武将の奥方を必ず自分のものにするらしい。そうして敵の奥方に、自分の子を産ませるのだそうだ」

「ますますもって悪趣味だな」

「覇王のこの手の噂はいくつもある。火を放った天守閣に自ら乗り込み、そこで敵の大将を斬り殺した後、火の手に構わずその場で奥方を手込めにした、とかな」

「ずいぶんと盛んな奴だな」

 ランドの返事は適当で、聞いているのかどうかもよくわからない。

 だが今のミツカにはそんなことはどうでもよかった。とにかく会議場に着くまで間をもたせたかった。

「いかれてるのは覇王だけじゃない。その部下に編隊長っていうやつがいるらしいんだが、こいつがとんでもない野郎で、攻め落とされた国では、年端もいかない姫がそいつのおもちゃになり、はらわたを切り裂かれたらしい」

「刺激的な逸話に不自由しない相手だ、ってことはわかったぜ」

 

 やがて二人は女王の宮殿に辿り着き、門番に通行証を見せると中へ入った。

 門をくぐるとそこには女官アキがいた。

 アキは若くして内政大臣を務める女で、行政について女王に次ぐ権限を持っている。

「おお、内政大臣どのも今夜の会議に参加されるのですか?」

 ミツカは敬礼し、隣にいるランドにも背中をつついて敬礼するように促した。

「ミツカお姉さん、ご無沙汰ですわね。そうよ。今度の戦いはかなり大規模なものになるみたいだから、経済と内政の見地から、わたしも意見を言うよう女王様から参加するように言われたの」

 戦士であるミツカと並ぶと、文官であるアキは華奢で小柄だ。

 二の腕の筋肉も盛り上がり引き締まっているミツカと違い、アキの腕が持ち上げることが出来るのは本くらいだろう。しかし、眼鏡をかけた顔は理知的でかわいらしい。

 これが専門分野の違いなのだなあと、ランドは柄にもなく感心していた。

 

(しかし、俺の好みはどちらかというと……)

 もう少したくましい女、そう思った矢先、突き当たりの扉が開き、金髪の女が顔を出した。

 鎧を着込み、鋭い表情をした女。ミツカよりもさらに一回り大柄な肉体。

 軍の最高責任者であるリルカだ。

「ミツカ、遅いぞ。第二の地位にいるお前がこんな具合では、下の者に示しがつかない。早く入れ」

 もとより従姉妹同士であるミツカとリルカは仲が悪い。それは親戚同士でありながら、常にライバルとして比較されてきたことに原因がある。同じ戦士の家系の出だが、剣術の試合でも常にミツカがわずかに勝り、最強の座はついに得られなかった。「山の神託」を受けた時にも、ミツカは念動力を身に付けたが、リルカは得られなかった。だがその代わり、この黄金の髪を手に入れたことはリルカにとっては良いことだったのかもしれない。その威容とカリスマは増し、リルカは軍を束ねる最高司令官の座に就くことになった。

(リルカ姉さんは別嬪だ。性格がおっかなくても構いやしない。だが……)

 会議の席に着き、金属製の胸当てを付けたままのリルカの両胸が、テーブルの上に乗っかる。

(胸がちょっと、大き過ぎるんだよな……)

 長いテーブルの先、リルカと反対側の席に着いたミツカを見ながら、ランドは皮肉な気持ちに満たされる。

(ミツカが『特別な力』の持ち主でさえなけりゃあな。なんで俺は、こんな女に惚れちまったんだろう)

 ランドがそんな不埒なことを考えていると、会議の場が静かになり、皆の注意が部屋の奥の扉に向けられた。扉が開き、たおやかな女性のシルエットが見える。女王が来たのだ。

 

 女王ノーシア。

 この北の国を治める女王は代々、その名で呼ばれる。

 女王は不思議な力を持ち、その姿は美しいまま歳を取らず、国民はいつ女王が代替わりし、母から娘へとその座が受け継がれたのかもわからない。

 しかし先代の女王が夫を迎えたのが二十年前だと言われているから、今の女王ノーシアはそれよりも若いことになる。

 若いとは言っても、それはこの女王国では珍しいことではない。同じ歳であるミツカとランドが十八歳。従姉妹のリルカはひとつ上の十九だ。この会議の席上でもっとも若いのはミツカのことを「お姉さん」と呼ぶアキだと思われるが、それとて国の歴史の中では決して珍しいことではない。この国では年齢も男女の別も、仕事をする上で違いにはならない。

 戦乱の世にあっては人間は若くして戦い、若くして娶り、若くして死んでいくが、そんな戦国の最中にある和の地においても尚、女王国を守るのは若き精鋭と言える戦士たちだった。

 

 扉の向こうの暗がりから女王が部屋の中へと足を進め、燭台の明りにその姿が照らされると、戦士たちは感嘆の声を挙げた。女王は『術者の装束』をまとっていたのである。

 女王は不思議な力を持っている。

 そのひとつが人智を越えた「念動力」であるが、今、この力を持っているのはこの国で女王とミツカの二人だけだ。

 和の地の中央に位置する『不死の里』にも、何人かの念動力を使うことの出来る人間がいるとされるが、『不死の里』の伝説は謎に包まれており、その存在も疑問視されている。

 女王が『術者の装束』を着用するのは、ふたつの場合だけ……『山の神』への儀式を行う際と、念動力を使用する際のみである。

 戦略会議に先だって女王ノーシアが『術者の装束』を身にまとったということは、つまり女王は念動力を使って自ら戦いの場に立つつもりなのだ。

「いけません、女王様」

 女王が席に着かないうちから、リルカは反対の声を挙げた。

「リルカさん、今度の相手は、とてもお強いのでしょう? 軍勢の数は十年前、まだ母上が女王だった頃に攻めてきた敵の倍以上だと聞いています」

 会議をするまでもなく、女王の心は決まっているようだった。

 

『術者の装束』は露出が多く、ただでさえ美しい女王ノーシアの姿を余計に色っぽく見せる。燭台の光に照らされて、女王の胸の谷間に沿ってやわらかな陰影が浮き上がり、右の乳房の内側に特徴的なほくろがあることまで、遠くから見ているミツカにはわかってしまった。ランドの視力は自分に劣らず良い。ランドはこの女王の姿を見て男としてどう思っているだろうかと、ミツカは無駄なことを考えてしまった。

「現在、我が女王国の財政は決して豊かではありません。それは二年続いた気候不順に加え、先月行われた山礼祭のために、典礼服や祭壇など例年より多くの費用を使いました。大規模な戦はあまりしたくないです」

 リルカの背後から手を上げて起立したアキが発言した。

「聞いたでしょう、リルカさん? 余裕を持って戦っている場合ではないでしょう? それに大規模な戦いで、たくさんの兵を死なせるわけにはいかない……私が決着を付けます」

 皆の気持ちを伺うようにゆっくりと歩きながら、会議のテーブルの手前で立ち止まり女王はそう言った。

「戦士の皆さんは、各自、敵の総大将が姿を現すまで、持ち場を守ってちょうだい」

「はっ!!」

 部屋にいる総勢二十名の上級戦士は全員、そう言って立ち上がり、敬礼した。

 

 女王がテーブルに着席することなく会議は終了した。

 くるりと向きを変え、部屋へと戻っていく女王の後ろ姿。

 その薄いベールのような『術者の装束』の下に浮き出たやわらなかお尻の曲線が、右に、左に、女王が歩くのに合わせて揺れるのを、男であれ女であれ、そこにいた全員が羨望とともに見つめていた。

 誰がこの若き女王の夫となるのだろう。

 その時、彼らの頭の中には戦の勝敗よりも、むしろそのことでいっぱいになっていた。

 

 

「お前はどう思う、ランド?」

「どうって、何をだ? 女王様の胸の大きさのことか?」

「馬鹿、罰当たりなことを言うんじゃない。さっきの会議の内容についてに決まってるじゃないか」

 上級戦士のみが集められた戦略会議の後、ミツカとランドは二人の住む地域の酒場に立ち寄っていた。

 もともと小さな酒場だが、これほど夜遅くになると客は二人の他には誰もいない。もっとも二階の宿には客がいるかもしれない。こうした酒場は、酒を飲んだ後で女を連れ込めるよう、簡単な宿も営んでいるからだ。

 ミツカがランドを連れてこの酒場に来るのは、一般の市民から情報を得たいからでもあるが、本当はこの店の出す麦酒が美味いからであり、またランドと一緒ならこのようないかがわしい場所でも心配ないからである。

「そうだなあ。俺はミツカくらいの胸の方がいいな。大きすぎず、小さすぎず、ってな」

「戦略についてだって言ってるだろ、この馬鹿。殴るぞ」

「そうだった。すまんすまん。だが順当なんじゃないか。二万もの軍勢と戦うとなると、いかに俺たち『山の戦士』であっても全員を相手にはできない。女王様は、兵を殺したくないんだろう?」

「だからって、女王様が自ら戦いの場に出ずともいいではないか? 力なら、私にもある」

「お前が力を使えば、敵の兵をたくさん殺しちまうだろ。能力は、使い手の性格が表れるっていうじゃないか」

「性格って……悪かったな、乱暴な女で」

「それに『特別な力』って言ったって、お前はその力を使えるようになって二年もたってない。実戦で使った経験も皆無だ。それに比べれば、代々その力を使ってきた女王様の方が、確実なんじゃないか」

「う、じゃあ私の存在価値はどうなるんだ?」

「お前は本当に戦いが危なくなって、たくさん敵を殺さなくちゃならない時のためにいるんだよ。女王様にはきっとそれは出来ない。女王様はお前を必要としているんだ」

 ランドは冷静に物事を見ている。子供の頃からそうだった。彼がそばにいたから、ミツカはどんなことにも立ち向かっていけた。

「ランド……私にはお前が必要だ」

「ちょっと酔ってきたんじゃないか」

「なんでお前の持ち場は、私の部隊からあんなに離れているんだ?」

「俺が下っ端だからだろう」

「お前の戦士としての地位が低いから、私までがとばっちりを食うんだ。なぜお前は出世しない?」

「さあな。俺はミツカみたいに強くないんだよ。あれだけ期待されてたのに、上級戦士の中で十本の指にも入れない」

「違う。ランド、お前は強い。私の意見ではお前は誰よりも強い。お前は優し過ぎるんだ。勝利を目前にしても、やれ相手の父親が病気だの、恋人の前で恥をかかせたくないだの、くだらない理由で勝ちを譲ってしまう」

 ランドは黙ったまま、少しだけ悲しそうな目をしてミツカの方を見ている。

「なぜもっと貪欲に勝利を奪おうとしないんだ、ランド! 今だってそうだ。山の掟がなんだ。特別な力がなんだ。もし今夜、お前が私を抱いて、私のことを奪ってくれるなら、私は……」

「飲み過ぎだな」

 ランドが制するまでもなく、ミツカはその場でテーブルに突っ伏し、すやすやと寝息を立て始めた。朝から部下たちの訓練をし、午後は実戦形式の演習を行い、夕方にはランドと常人離れした特訓、そして夜には会議だ。疲れない方がどうかしている。

 

(私が本当に愛しているのはお前だ。だから、力を授かった私を抱けるのは、この世でお前しかいないじゃないか……)

 ミツカが言いたかったその先は、酔いと睡魔に阻まれて、口から言葉として出ることはなかった。

『特別な力』を持てるのは、汚れのない処女だけ。だが本当に愛する人間が相手であれば、力を失うことなく子を宿すことが出来るとされる。代々の女王が夫を選ぶのに時間がかかるのはこのためだ。

 ランドは店の親父に酒代を支払うと、酔いつぶれたミツカを抱えて店を出た。このまま酒場の上の宿で朝まで、なんてことは考えない。ミツカを背負って彼女の家へと向かう。

「ミツカ……好きだぜ」

 ランドがふとつぶやいた言葉も、彼の背中で寝息を立てるミツカには聞こえない。

 

 

 遠くに山が見える。

 北の山。

 女王の不思議な力の根源であり、古代より女王国を守護する神聖なる山。

 それは女王国の繁栄の象徴として、女王自身と同じように、いやそれ以上に崇拝の対象となり、この地に生きる者の心の支えとなってきた。

 この山を背にして戦う限り、負ける気はまったくしない。

 女王国と南に位置する長羽国との国境付近の平原。

 女王国の軍隊一万とそれを率いる二十名の上級戦士たちは、北上してくる覇王軍を迎え撃つため、この地に陣を敷いていた。

 覇王軍の軍勢は二万という情報が伝わっている。

 対する女王国の兵は一万。

 数の上では明らかに不利だ。

 

 国の大きさを考えれば、女王国が一万の兵を動員できるのは驚くべきことである。

 それは女王国の民たちは、自分たちの生きる国が他とは違うことを知っていて、そのことに誇りを持っているからである。

 農民を徴兵するのではなく、自ら志願して組織される女王国の軍隊が、これほどの数を集め、そしてこれほど強力に訓練されているのは、この国の結束の固さを意味する。

 女王国が戦国の世にあって独立を維持してきたのは、女王の不思議な力以外にも、この兵たちの組織化された強さに要因がある。

 だが今や中央をほぼ自らの手に収めた覇王軍は規模が違う。

 忍びの情報では今回の出征を率いているのは副将ジハラ。

 覇王軍では第二の地位にあり、覇王アレイクが尾破の地で旗揚げした時からその片腕として戦ってきた猛将である。

 現在の覇王軍の兵力総数は十五万と言われているから、今回の兵はその約七ぶんの一。

 それですら、女王国の兵の総数に倍するのである。

 だが、国を愛し命がけで守ろうと戦う一万人である。他国を侵略しようなどという不届きな理由で戦う兵に負けるわけがない。

 ミツカはそう思っていた。

 

「なあ、お前もそう思うだろ、ランド?」

 一人きりなのに、思わずそうつぶやいてしまうのは、ミツカが幼い頃からいつもランドと一緒にいたからだ。だがランドは、二十人の上級戦士たちの中でももっとも後ろに配置されている。本気で戦えば随一の戦闘力を持つ男なのに、司令官は何もわかっちゃいない。ミツカは、子供の頃から常にライバルとして競い合ってきたリルカの黄金の髪を思い浮かべていた。

「来ました!」

 見張りの声に我に返る。

 遠く地平線の彼方から、土煙が立ち上る。

 最初にやってきたのは騎馬兵だ。

「二万にしては少ないな」

「旋形の陣を敷いているのだろう。これは厄介だぞ」

 ミツカと同様、先鋒の役目を仰せつかっているアーカスが答えた。

「どうする?」

「作戦どおり引き付けよう」

 最初に来るのが騎馬兵だとすれば、防御柵で半分は防げる。

 女王国には馬に乗る習慣はないので、騎馬兵はいない。だが「山の戦士」の機動力がそれを上回ることは、過去にこの国を侵略しようとした武将たちが、ことごとく敗れていることからも証明されている。

 

「兵を殺したくない。俺が行く」

 そう言うと、アーカスは飛び出した。

 まだ敵の騎馬兵は五町ほども先の距離にいる。

 だが優秀な「山の戦士」はその距離をほんの十数秒で移動する。

「引き付けるんじゃなかったのか?」

 ミツカがあきれている間にも、敵の騎馬兵の中に血しぶきが上がるのが見え、一瞬遅れて剣がぶつかる「キン!」という音が聞こえてきた。

 続いてわめき声が聞こえ、敵兵が混乱しているのがわかる。

 馬が倒れ、次々に血しぶきが上がる。

「山の戦士」の圧倒的な機動力は、奇襲においてもっとも発揮されるのだ。

 

 だがアーカス一人では、次々と押し寄せる騎馬兵をすべて相手することは出来ない。

 血しぶきをくぐり抜けて、何騎かの兵が、女王軍へと駆け寄ってくる。

「仕事の時間だ」

 ミツカは跳躍して自陣から飛び出し、ほんの数秒のうちに走り来る騎馬兵とすれ違った。さらに数秒の間を置いて、馬から敵兵が転げ落ちる。五騎、いや六騎。

 これからおそらく、これに数十倍する数の人間を殺さなければいけない。

「兵たちには指一本触れさせん。この場は我ら山の戦士、ミツカとアーカスの二名で十分!」

 ミツカが雄叫びを上げる。

 敵兵はどよめき、遅れてやってきた歩兵たちは化け物でも見たかのように足を止め、ミツカとアーカスの二人を遠巻きにした。

 まさしく彼らは化け物だった。

 先陣にいた騎馬兵二百、そして歩兵五百。その半分がこのたった二人の刃にかかり、残りの半分は向きを変えて逃げ出した。

 

「山の戦士」の尋常ならざる力は、女王国の守護神である「北の山」の神託によるものだ。

 生まれついての戦士としての才能を持った者が、さらに選び抜かれ、女王の儀式によって神託を受ける。

 山の神にふさわしい者と認められれば、彼らの身体能力は通常人の三倍と言われる領域にまで異常発達する。

 だがその神託を受けることが出来るのはほんの一握り。今この国では上級戦士の位を持つ二十名だけだ。彼らは「山の戦士」と呼ばれ、長きにわたりこの女王国を外敵から守り続けてきた。

 ミツカは中でも、その「神託」によって『特別な力』、つまり念動力を身に付けた稀な存在だ。

 しかし今回の戦では、その力を使うことはない。

 あくまで戦士としての役割を任されている。

 そのためミツカは『術者の装束』ではなく、普段どおりの『戦士の装束』を身に付けていた。

 機動力と身体能力を重視する「山の戦士」にとって、防御は最小限にとどめる方が理に適う。

 よって『戦士の装束』は革による部分的な保護の他は、動き易いための丈の短い意匠になっている。

 ミツカは戦士としては決して大柄な方ではない。また細身に締まった肉体は艶やかな若い女そのものだ。『戦士の装束』から露出したふとももは、敵兵の目に魅力的なものとして映り、彼らは息を飲むが、次の瞬間にはノドを切り裂かれ、その息を断たれている。

 またミツカは女王国の女としては珍しく胸押さえの下履きを着けないため、彼女が躍動する時、その胸も踊る。装束の隙間から女のふくらみが覗く。男の兵はどうしても一瞬、ミツカのその部分に目を奪われる。本人はまったく意識していないことだが、そういう意味ではミツカは、男の兵を相手にして有利に戦う天性とも言える条件を備えていた。

「たいしたことないな」

「ああ、だがあっけなさ過ぎる。もしかすると陽動のための捨て駒かもしれん」

 退却していく敵を見送りながらアーカスがそう呟く。

 

 

 彼の懸念は的中し、その頃、回り込んでいた覇王軍の主力は女王国の陣の中でも手薄な左翼に攻撃を開始していた。

 潮のように押し寄せる軍勢。言い訳程度にこしらえてあった防御柵も大した効果はなく、まともにぶつかりあった兵と兵の間で斬り合いが始まった。数に劣る女王軍にとって一番望まない展開である。

 左翼を任されていた「山の戦士」の一人、タケマサはこの事態に驚愕し、大慌てで敵中に飛び込んだが、これほどの乱戦だと、敵と味方の区別もつかない。このままでは無駄に兵を殺してしまうばかりか、左翼の陣を突破されるのも時間の問題である。

「やばい、やばいぞ!」

 山の戦士の序列では第十の位を持つタケマサだが、こと実戦の場にあってはその実力は必ずしも見合っていなかった。陣を破られれば皆に迷惑がかかる。こんなことなら、前線など志願するんじゃなかった。

 と、その時、タケマサの肩を誰かが叩く。

「おい」

 ランドだった。その表情はにこにこと、どこか楽しげだ。戦の最中に、こいつは何を考えているんだ。

「おい、タケマサ、漁を手伝ってくれないか」

「漁? 何を言ってるんだ。今は戦の最中だぞ。陣が破られそうなんだ。魚を取ってる場合じゃないだろ」

「取りたいのは魚じゃないぜ」

 そう言って見せたランドは、手に何か折り重なるように畳まれた分厚いかたまりを抱えていた。

「そ、そうか!」

 タケマサにもようやく飲み込めた。

「この網は一人じゃ引けないんでな」

 

 女王国は、優れた紡績技術を持っている。そこでは木綿や絹といった自然素材ばかりでなく、いわゆる化学繊維に分類される繊維すら普及している。それは『山の神』の儀式によってもたらされる特殊な技術なのだ。ランドが持ってきたのは、高い強度を持つ繊維で作られた網だった。

「そうりゃ、殺し合ってる場合じゃねえぞ!」

 ランドが網を投げると、一町先へも届きそうなほどの大きさへと広がり、その反対側をタケマサが掴んだ。

「仲良く網にかかっちまいな」

 二人の「山の戦士」が持つ、スピードとパワー。

 尋常ならざる力に、網にかかった何百人という兵士たちが引きずられていく。

 その中には敵兵だけでなく、味方の兵も含まれているが、人間離れした力で文字通り体を持っていかれると、皆その時点で戦意を喪失していた。

「タケマサ、さあ掃除を続けよう」

 これで効率がよくなった。

 押し寄せた覇王軍の兵士たちは、網にかかり、たった二人の「山の戦士」たちによって、次々に押し返されていく。網を破ろうと剣をふるっても、高い強度を持った繊維で出来た網はびくともしない。

「ランド、またお前に借りが出来たな」

「気にするなよ。今度麦酒でもおごってくれ」

 タケマサは自分の陣の後ろにランドの部隊が配置されていたのを幸運に思った。

 上級戦士としての序列こそ自分の方が上だが、タケマサはランドが自分より強いのを知っている。

 そしてランドも序列にこだわらず自分に接してくれるタケマサのことが好きだった。

「娶ったばかりの可愛い嫁さんを泣かすわけにはいかないだろ?」

「お前の方こそ、早くあの子に気持ちを伝えたらどうなんだ」

 二人がそんなへらず口を叩く頃には、左翼に攻め入っていた覇王の兵たちは皆退却し、そうでない者は網にかかって気を失っていた。

 

 

 ランドとタケマサが敵兵を相手に漁をしていた頃、女王軍の右翼に総司令官であるリルカが訪れていた。

(正面が陽動、左翼に主力、と見せかけて、本当の狙いは右翼か)

 リルカは冷静に敵の狙いを読み取っていた。

「作戦通りに敵を引きずり出すには、ここで一度、負けねばならん」

 一兵たりとて失いたくない。しかしこれは戦だ。何かを犠牲にしても、勝利をもぎとらなくてはならない。司令官の仕事はその犠牲を最小限にすることだ。

「すまん。ホウジョ、お前の兵を三百人、いや二百人くれ!」

 リルカは短くそう言い、ホウジョの顔をまっすぐに見つめると、一秒おいて深々と頭を下げた。

「司令官殿、お顔をお上げください。この老体、いつでも死ぬ覚悟は出来ております。ましてや我が兵の中には、三十年来一緒に戦ってきた仲間もおります。はい、先代の女王様の時からです。いつでも女王様のために、死ぬことの出来る機会を探しておりました」

「山の戦士」の中で最年長。三十年以上にわたって国を守ってきたこの歴戦の勇士は、仲間を死なせるつもりはない。彼らを守って自分が死ぬ気なのだ。リルカにはそれがわかった。

 だが……

 戦いの趨勢は読めない。刻一刻と変わる戦況の中、ひとつの判断の間違いが致命的な結果につながることもある。

 それでも我々「山の戦士」、いや女王国の人間には、信じられることがある。

 山の神の加護は必ずある。

 そして女王様は、必ず来てくれる。

「頼む」

 リルカはそう一言だけ言って、自分より二周りも小柄なこの老兵の肩を叩くと、彼に向かって敬礼した。

 

 リルカがホウジョに伝えた命令。それは何もしないことである。

 覇王軍の主力は左翼と考え、右翼にあっての対応を怠ることである。

 そうして防戦一方となり、その中で出来る限り時間を稼ぐ。当然、兵を死なせることになる。

 今回の戦いの中で、もっとも地味でありながら、もっとも苛烈な役目だった。

 だからこそ右翼の陣のさらに先から、迂回した覇王軍の大軍勢が迫ってきた時、ホウジョは大慌てしてみせた。それは、実際に戦場で何度も大慌てを経験してきた彼だからこそ出来た名演技である。

 大慌てで弓矢を放つ。大慌てで歩兵を繰り出したかと思えば、大慌てでその歩兵を退却させる。

「簡単なものよ。ただ死ねばよいのだから。のう、ホウジョ殿」

 長年の戦友である数人の兵士は、そう言って笑っている。

 陣が破られ、敵兵がなだれ込んでくれば、自分は彼らを守らなければならない。

 ホウジョはそれが自らの最後の役目だと理解していた。

『山の戦士』の力があるとはいえ、この老体でどれだけ持つだろうか。乱戦の中で斬り合って、何人やれるか。昔のようにはいかぬ。雑兵の百人、二百人がせいぜいではないか。それではおそらく、敵の総大将までは届くまい。ならば最後まで、仲間たちを守ってみせよう。

 

 敵の弓矢が降り注ぐ。敵兵の声が響き、最後の頼みの防御策が倒される。

「皆の者、とくと見よ、このホウジョの最後の晴れ舞台。この舞いを山の神に捧げようぞ」

 はーっ、と声を上げ、宙に飛び上がる。両手には二刀を構えている。

「……って、ちょ、ちょっと、どういうこと、これ?」

 ホウジョが飛び上がったところで、彼の体は停止してしまった。空中に浮いたまま、身動きが取れない。見ると放たれた矢までが、彼の周囲で空中で停止している。

「女王様だ!」

 ホウジョが振り返ると、自陣の後方、光り輝く何かが見える。

 日の暮れかけた薄暗い戦場の中、そこだけが不思議な光に包まれている。北の女王ノーシアは、兵士たちの頭の上を歩くようにして、空中をゆっくりと、敵陣に向けて進んでいた。

「ホウジョさん、よくやってくれました。おかげで敵の総大将を見つけることが出来ました。でも、あまり無理しないでくださいね。あなたには、いつか私の結婚式にも出てもらいたいと思っているのですから」

「じょ、女王様……」

 空中に止まったまま、感激に震えるホウジョをよそに、女王ノーシアは敵陣を見据える。

 その表情は一瞬、きっと引き締まったが、すぐに落ち着いた様子に戻り、女王は自陣の柵を越えると地面に降り立ち、そのまま花でも摘みに行くように覇王軍の軍勢に向かって歩きだした。

 

 敵兵はあっけにとられている。乱戦の最中にいきなり現れた、美しい女性。

 その姿はうっすらと光り輝き、『術者の装束』の薄い生地を通して、胸や腰のラインが見える。

 その女がまっすぐにこちらに歩いてくる。

 自然に道が開いた。

 自分でそうしようと思ったわけではないのに、覇王軍の兵士たちは歩みを進めるノーシアに、自然と道を開けてしまっていた。

 すべてが理解を越えていて、誰も声を出そうとすらしない。

「て、敵国の女王ぞ! 討ち取れ! 矢じゃ、矢を放て!」

 我に返った敵将の一人が声を上げ、遠くから矢が放たれる。しかしその矢はすべて空中で停止し、ノーシアの進む道に沿って、空中にアーチのように並んでしまった。

 まるで散歩でもするかのように、白いベールを揺らし、お尻を左右にくねらせながらノーシアは歩いていく。

 そして、一人の騎馬武者の前に来ると、ぴたりとその足を止めた。

「あなたがジハラさんかしら?」

「そ、そうだ……お前は、いったい」

「ごめんなさいね」

 そこからの女王の動きは速かった。手をぐっとかざし、拳を握り、ぐぐっとひねる。

「ぐふっ……!」

 騎馬上、兜を被った武将の首がよじれる。泡を吹く。数秒と待たずしてジハラは絶命していた。

 覇王と共に旗揚げしてより五年余り、いくつもの激戦を制し、数々の武将の首級をその槍玉に上げてきた猛将の、あまりにもあっけない最後だった。

 総大将を殺されたというのに、覇王軍の兵士たちは一歩も動けない。

 女王ノーシアは、香草でも摘んだ帰りのように、鼻歌を歌いながら自陣に引き上げていく。

 それは一騎打ちなどと呼ぶことすら出来ない、一方的な虐殺だった。

 

 ノーシアの姿が女王国の陣の中に消え、彼女が放っていた光が見えなくなった後も、覇王軍の兵士はまだ呆然としていた。

 ここから後は司令官の仕事だ。

 リルカは矢倉の上に立つと、全軍に向かって大声で叫んだ。

『山の戦士』の身体能力を生かした、桁外れの肺活量による大音量である。

「覇王軍の兵士よ、よく聞け。お前らの総大将ジハラは、我らが女王ノーシア様によって討ち取られた。これ以上の戦いは無駄である。命を大事にするならば、早々に退却されよ!」

 驚異的な「山の戦士」たちの戦闘能力。

 突如現れた光り輝く「女王」。

 あまりにも無惨な総大将の討ち死に。

 そしてこの有無を言わせぬ大音量。

 心を砕かれた覇王軍の兵士たちは、一斉に退却を始めた。

 

「日が暮れる前に終わって、よかったわ。夜になってから力を使うと、光に照らされて、兵士の皆さんに私の下履きまで見えてしまいますもの」

 暢気なことを言っているこの若き女王を、リルカはこの時、心底恐ろしいと感じた。この女王のいる限り、戦に負けるなどあり得ない。

 戦死者の数は、覇王軍二千に対して、女王軍は三百。

 被害を最小限にとどめ、敵も含め極力兵を殺すことなく、相手の戦意を喪失させる。

 数字の上では確かに敵軍に決定的な打撃を与えたわけではないが、覇王アレイクの片腕と呼ばれる男を討ち取った。

 これが女王国の戦の仕方なのだ。

 (体験版ここまで)

 

 

 

さて、不思議な力を持つ女王ノーシアに率いられた「女王国」。
戦国時代にあって、ありえない文化や技術を誇るこの華麗なる国と、そこに生きる主人公たち。

初戦に見事な勝利を収めたとはいえ、これから覇王軍を相手に、勝ち続けていけるでしょうか。

そしてミツカとランドの運命はどうなるのでしょうか。

しかしこの物語は、あくまで「寝取られ」の物語です。
戦いの先に待つのは、壮絶なる寝取られしかありません。
主要な女性キャラは、ほとんど全員と言っていいほど、敗北し、脱がされ、ヤられるのです。

けれども、本当の戦いはその後。

かつてないスケールで描かれる、寝取られ大河ドラマをぜひ、お読みになって下さい。

 

前編、後編の二部構成になっております。

 

 

 

 

 

 

よろしくお願いいたします。

八ヶ岳昌司