いじめられっ子の少年とテニス部のアイドルの恋

 

 

 プロローグ

 初恋は実らないものだ、と人は言う。

 少年の頃の淡い初恋が実り、その相手と結婚することはほとんどない。

 だから初恋の女性は、どんな男にとっても、手の届かない永遠の憧れとして存在し続ける。

 正善(まさよし)にとって、それは希美(のぞみ)という一人の少女だった。

 希美は、その名のとおり、彼にとっての希望として青春の中に現れた。

 彼は初めて恋に落ち、そして青春時代を通して、彼はその少女に恋をし続けた。

 

 そのことを考える時、正善は自分は幸運だと感じる。

 学生時代には高木希美という名前だったその少女は、今では二十三歳の美しい大人の女性になり、正善と同じ苗字を持つ、川辺希美として、彼の隣にいてくれるのだから。

 それは、かつていじめられっ子だった正善にとって、まるで宝くじに当たるような、奇跡にも等しい出来事だ。

 

 けれど、正善の初恋は本当に実ったのだろうか。

 夫婦で寄り添って眠るダブルベッドの傍には、揺りかごの中、一歳三ヶ月になる長男がすやすやと眠り、正善の腕の中では、あの頃以上に美しくなった希美が正善にすべてを委ね、安心しきった表情で寝息をたてている。

 もうすぐ妊娠四ヶ月になる希美のお腹には二番目の子供がいて、パジャマのお腹が日に日に膨らんで来ている。

 けれど、その揺りかごに眠る長男も、お腹の中の赤ん坊も、正善はその父親ではないのだから。

 長男の建一が産まれてから、希美はすでに十人近い男達と何度もセックスを交わしているのに、正善と希美の間には、月に一度のセックスがかろうじてあるかないかという状態なのだから。

 

 愛する女性を、憧れの初恋の女性を、こうして腕に抱きながら、正善は自分がずっと失恋し続けているような気持ちに襲われる。

 そう思えば思うほど、目の前の希美が愛しくなって、たまらなくなった正善は思わずすやすやと眠る希美をぎゅっと抱きしめる。

 うーん、という寝ぼけた声を出して、希美が目を覚ます。

「うん……まさくん、ダメよ。今日は……とっても疲れてるんだから……また今度ね……」

 そう言って、希美はふたたび眠りに付く。

 

 希美が疲れているのは、正善もよくわかっている。

 希美は今日、夕方からつい先程まで、石川と山口という二人の男に、何時間もかけて抱かれていたのだから。

 二人は度々やってきては、夫の正善に構うことなく希美を抱いていく。いつものとおり、石川に頼まれて煙草を買いに行った正善は、二時間後に帰宅した後、買ってきた煙草を渡すこともなく、寝室から漏れてくる希美のあられもない声を、そこから二時間近くも聞かされていた。

 希美が二人の男と一緒に裸になり、セックスの快感を味わっている間、正善は一人で晩飯を作り、揺りかごの建一にミルクを飲ませ、メールの返信をして明日の仕事に備えていたのだ。

 わざわざ脱がせて確認しなくても、希美のパンツには、あいつらが希美の中に出していった精液が流れ出して、染みになってしまっているだろう。

 

 そして希美のお腹にいる赤ん坊は、またそれとは別の男が、希美とセックスして出来た子供だ。

 その憎い男の名前を、正善は口にもしたくない。

 

 どうして、こんなことになってしまったのだろう。

 愛し合って結ばれたはずの正善と希美は、どうして普通の夫婦になれなかったのだろう。

 

 正善は思い出す。

 あの青春の日のことを。

 希美と初めて出会ったあの頃のことを。

 それは学園生活、その最初の年のことだった。

 

 

 第一章 テニス部

 

 とある地方の田舎町。

 梅之園学園、テニス部。

 正善は男子テニス部の他の六名と一緒に、校庭をランニングしていた。

 

 H県にある、人口二十万人ほどの地方都市。

 梅之園学園は、そこにある私立学校だ。

 偏差値ははっきり言って低い。

 市内にある普通科の学校の中ではもっとも低い。

 男子生徒には、工業、農業、漁業といった学校の選択肢があるが、女子生徒たちにとっては、この梅之園学園は事実上、学力に恵まれず、他に行き場所のない生徒が集まる学園になっていた。

 そのぶん、女子生徒の割合が高く、女子が七割弱に対して男子が三割強といったところで、その結果この梅之園学園は別名を「女の園学園」と呼ばれるようになった。

 これは、単に女子生徒の比率が高いだけでなく、そこにいる生徒たちは勉学よりも遊ぶことに熱心で、この学園に通う男子生徒は三年の学園生活を送る間、女子生徒と何人もヤることができるということで付いた名だ。

 

 女の子の学力と美貌が必ずしも比例しないのは世の倣いで、市内でも一番に低い偏差値を誇るこの学園には、数だけでなく、質の面でもカワイイ女の子が多かった。

 だが、その傍から見れば天国のような女の園に入っても、正善はそんな楽しい学園生活とは縁がなかった。

「ほら、川辺、何やってんだよ。遅いぞ」

 ランニングをしながら、後ろを走っている加藤が正善の尻にケリを入れる。

「い、痛っ。加藤くん、や、やめてくれよ!」

「やめてくれ、じゃないだろ。やめてください、って言えよ」

 そう言いながら、またも加藤は正善にケリを入れる。

 速いペースで続くランニングに、もともと運動の苦手な正善は付いていくのが精一杯だ。少しでも遅れると、後ろからケリが飛んでくる。

 校庭十周のランニングが終わる頃には、正善の尻はヒリヒリと痛み、尾てい骨にじんじんとした痛みが疼いていた。

 

 痛みと疲れで正善は倒れるように膝を着き、ぜいぜいと肩で息をしている。

「ケッ、情けないやつだな、川辺は。たった十周でもうダウンかよ」

 佐々木がぺっと唾を吐く。その唾が正善の目に命中した。正善は痛みで片目をつむり、シャツの裾で必死で顔を拭き上げた。

 思わず涙が出た。

 目の痛みだけじゃない。

 悔しかったからだ。

 そして自分が情けなかったからだ。

 見下されている自分が。

 こんな立場に置かれている自分が。

 入部してからもうすぐ二ヶ月。

 正善はいじめられていた。

 

 たった七名の男子テニス部。

 その中で正善がいじめられたのは、ある意味で必然だった。

 体も小さく、もともと運動神経の良くない正善は、その中で一番テニスが下手だったからだ。

 大会でも実績を残し、部員も多い女子テニス部と違い、男子テニス部は正善を入れて七名だけ。そして彼らは、テニスに打ち込みたいと思って入部したわけではない。単にどこかの運動系のクラブに所属しないと学園生活を送れないからだ。それはつまり、運動系のクラブの一員にならなければ仲間はずれになるという意味でもあり、そうしないと女子にモテないという意味でもある。

 彼らがテニス部を選んだのは、決してテニスが好きだからではなく、女子テニス部の部員たちと付き合いたいからであり、そしてあわよくば、その女子テニス部の女の子たちとヤリたいという理由からだ。少なくとも、こうして隣り合ったコートで練習していれば、テニスウェアで躍動する彼女たちの姿を眺めていられる。

 そんな彼らだから、スポーツマンシップにのっとってテニスに打ち込み、青春のすべてを賭けるようなつもりはまったくない。

 単に暇つぶしのために入部した部員たちにとって、いちばん弱い者をいじめて楽しむのは、当然の流れだった。

 

 テニス部の監督をするのは、五十代の初老の美術教師。

 それも今年、長年監督を務めた体育教師から引き継いだばかりで、やる気もなければ経験もなかった。

 自然と監督は、実績もあり指導も楽な女子テニス部の面倒ばかりを見るようになり、男子テニス部はほとんど放置されていた。

 三年生が引退した後は部員がおらず、廃部寸前だった男子テニス部には、専任で監督する教師すらもいなかったのだ。

 そんな男子テニス部を救ったのは部長の小久保の存在だった。

 廃部が検討されていた男子テニス部だったが、中学時代にいくつもの大会で優勝した実績のある小久保の入部が決まり、存続することになった。

 だが、その小久保も、本心では他の生徒たちと大差はなかった。

 確かにテニスの腕は一級品だが、その性格は傲慢そのものだった。

 そもそも、正善がこうして皆にいじめられるようになったのも、小久保がその原因なのだから……

 

「大丈夫か、川辺?」

 かがみこんで息をつき、涙と汗で顔をぐしゃぐしゃにした正善に、誰かがタオルを差し出した。

 松井だ。

 彼だけは、いじめに加わらない。

 小柄な彼は、身長が170センチに届かない正善よりもさらに二センチほど背が低いが、勘が良く、俊敏なため、勝負に強く、テニスを始めて二ヶ月にも関わらず、強烈なボレーを得意技として身に付けていた。

 部長の小久保も、あいつはセンスがある、と言っているほどだった。

「ああ、ありがとう」

 正善はタオルを受け取ると、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を拭き、松井に礼を言った。

「負けるなよ」

 松井が言う。

 そうだ。こんなことで負けていられない。学園生活はまだ始まったばかりだ。そして、僕の人生もまだ始まったばかりなのだから。

 

 正善は立ち上がり、ラケットを掴んでコートに向かう。

 コートの中では、部員たちがもう次の練習を始めている。

 部長の小久保の打つサーブを、一人ずつ打ち返すリターンの練習だ。

 出遅れたが、他の五人の後ろに並んで、正善は練習に参加した。

 先頭にいる加藤がコートに入り、小久保の強烈なサーブを打ち返す。

 加藤も決して下手ではないが、学生離れしたパワーを持つ小久保のサーブは打ち返すだけでも大変だ。

 僕にあれが返せるだろうか。

 そう思ってコートを眺める正善の視線に、その時、思いも寄らぬものが飛び込んできた。

 それはたまたま、サーブを打つ小久保の向こうにそれが見えただけだったが、正善の目には、それは突然、飛び込んできたように映ったのだ。

 一人のすらっとした、背の高い女の子が、髪をポニーテールに束ねて笑っていた。

 それは決して、正善の方を見て笑っていたわけではなかったけれど、正善には自分の方を見ているように思えた。

 その子はすぐに反対側を向いて、練習の続きを始めてしまったけれど、正善はもうその子から目が離せなかった。

 足を開いて重心を低くして構え、ボールを打ち返すその子の姿。

 その身体のラインに、背中のウェアの白さに、そして揺れるスカートとお尻の曲線に、正善の目は釘付けになった。

 

 目を奪われた正善は、自分の前にいた松井がコートに入ってリターンを打ち返しているのにも気が付かなかった。

(き、きれいだ……)

「ほら、川辺、次はお前だぞ!」

 後ろから言われてはっと我に返る。

 遅かった。

 意図的に狙った小久保の強烈なサーブが正善の顔に直撃し、正善は倒れて気を失った。

 薄れる意識の中、瞼の裏には、あの子の笑顔が焼き付いていた。

 

 

 小久保の顔が見える。

 ラケットを持ち、怖い顔でこちらを見据える男子テニス部の部長。

 そのすぐ後ろに、天使のような女の子が微笑んでいる。

 あの子は誰だろう……?

 小久保がボールをトスし、強烈なサーブが飛んでくる。

 そのボールが目の前まで迫り、当たる、と思った瞬間、正善は目が覚めた。

 

 頭に当たったのは、ボールではなく、教師の投げたチョークだった。

「おい、川辺、いいかげんにしろ。お前たちが勉強する気がないのは知ってるが、こう堂々と居眠りされちゃ、俺たち教師も立場ってものがないぞ」

 あきれたような数学教師の言葉に、教室の皆が笑い出す。

 寝ぼけた正善は頭をかいてごまかすしか出来なかった。

 実のところ、もう何日も、眠れない日が続いている。

 正善は、あの子のことが気になって眠れないのだ。

 文字通り、寝ても覚めても、あのきれいな女の子のことを考えてしまう。

 

 放課後になり、テニス部の練習が始まると、正善は自然にその子の姿を探してしまう。

 春の大会で三年生が引退した後、女子テニス部の部員は、一年生が十四名、二年生が十名だ。

 人数と実績の違いから、練習のためのコートも男子が一面だけなのに対して、女子テニス部には三面も与えられている。

 その三面で走り回る二十四人の女子の中から、一人の姿を見つけ出すのは簡単ではなかったが、正善はいつもその子を見つけだし、そして練習の間中、遠くから見つめ続けた。

 正善は、これが恋なのかと思った。

 もちろん、中学時代、男は毛が生え揃い、女の子たちの胸が大きくなってから、そんな彼女たちの胸やお尻を見て、顔が赤くなったことはある。いいな、と思ったことも少しはある。

 けれども、こんなふうに一人の女の子のことが、いてもたっても忘れられず、ずっと頭から離れないなんてことは、正善には初めてのことだった。

 たった一度、その子のことを見ただけで、正善は強烈な恋に落ちてしまったのだ。

 

 初恋。

 正善はその言葉を頭の中で繰り返した。

 自分は初恋をしている。

 なのに、自分はまだ、その子の名前も知らない。

 でも名前を知らなくても構わなかった。

 一人の女の子を好きになったというだけで、正善にはひとつの目的ができたのだ。

 たとえいじめられるとわかっていても、あの子の姿を見たいと思うと、正善はテニス部の練習に参加する勇気がわいてきた。

 

 そして、そのチャンスは意外なほどに早くやってきた。

 クラブ活動が終わり、夕闇の迫った薄暗い道を、正善は帰宅していた。周囲には畑と、何軒かの住宅。遠くにはこの地域で一軒しかない総合病院の建物が見える。

 今日も何度も部員たちに尻を蹴飛ばされ、じんじんと痛む尾てい骨をさすりながら正善が歩いていると、後ろの方で「バイバイ~」という声がした。女の子の声だ。正善は何気なく振り返ると、ぎょっとして息を飲んだ。そこにいたのはあの子だったからだ。

 帰り道、女子テニス部の友達と別れたその子は、正善と同じ道を歩いてくる。とぼとぼと歩く正善の、気が付けば彼女は、ほんの五メートルほど後ろを歩いていた。

 気が付かない振りをして歩きながら、正善は気が気ではない。心臓がばくばくと音を立てて高鳴る。その音があの子に聞こえてしまうんじゃないかと思うほどだ。

 

 どうしよう。話しかけたい。名前を知りたい。

 でも、突然話しかけて変なふうに思われないだろうか。

 けれどもこの気持ちを抑えておくことの方が正善にはつらかった。

 正善は我慢できずに振り返ると、彼女に向き合い、立ち止まった。

 自然と彼女も立ち止まる。

 お互いを見つめ合う。

 やっぱり可愛い。正善の顔が赤くなる。

 こんなふうにしてあの子を正面から見るのは初めてだ。

 

「あの……」

 正善が声をかける。

「何ですか……?」

 ちょっと戸惑った様子で彼女が答える。

「あの……僕、川辺です。川辺正善。一年D組の」

「わたし、高木希美です。一年E組」

 正善がずっと知りたかった彼女の名前はあっさりとわかった。

「僕、テニス部で……ずっと見てて、上手い人がいるな、って」

「あ、男子テニス部の人なのね。ありがとう。テニスは前からやってたの、わたし」

 テニス部だとわかって安心したのか、彼女は微笑んだ。

 

 正善は本当は『上手い人』ではなくて、『かわいい人』と言いたかった。それに弱小の男子テニス部とはいえ、同じテニス部に所属していながら、彼女が自分のことを知らなかったことにも落胆した。けれども、そんなことはどうでもよかった。こうして彼女と話し、彼女の名前を知ることができたのだから。

「E組っていうことは、進学コースだよね……高木さん? 頭いいんだね」

「ううん、そんなことないよ。三年の冬に引っ越してきて、思うように受験勉強ができなくて、やっとここだけ受かったの」

 正善は内心で驚いた。思うように勉強ができなかったのに進学コースに合格しているということは、彼女の学力は自分には手の届かないはるか上空だ。

 進学コースは、勉学という点では評判の悪い梅之園学園が数年前に新設した、学力の高い生徒を迎え入れるための科なのだ。

 だからこそE組の教室は、他のクラスとは離れた場所に設置され、特別扱いされている。

 

「テニス、やってたって……?」

 相手の言葉をそのままおうむ返しするようでカッコ悪いなと正善は思った。

 でも、何か話題を探さないと間が持たない。共通の話題と言えば二人が所属するテニス部のことしかない。

「そうなの。パパとママが若い頃にやっていて、二人はそれで知り合ったんだって。だからわたしもテニスをやるように勧められて、小学校六年の時からやってる」

 それなら上手いはずだ。練習の時の様になった構えや、きれいなスイングも納得が行く。正善は思った。

「パパとママはどんな人なの?」

 正善は自分でも間の抜けた質問だと思った。でも、連想ゲームのようにして次々に話をつないでいかないと、会話が終わってしまう。正善はなんとか希美との会話を長引かせようと必死だった。

「ふふ……面白いこと聞くのね、川辺くん? パパは化学繊維を作る会社に勤めてる普通のサラリーマンよ。転勤になって引っ越してきたの。ママは絵とか陶芸とか、そういうのを見るのが好きな、ちょっと不思議な人。でも大好きなの。元ロック少女で、家では古い音楽ばかり流れてるの」

「古い音楽?」

「そう、1960年代とか、70年代とか。わたしが好きなのは、エルヴィス・プレスリーとか、クイーンとか、あとはやっぱり、ザ・ビートルズ」

「ザ・ビートルズ? 僕も父さんが好きで、子供の頃から何度も聞かされてた。あのレット・イット・ビーっていうアルバムは、僕も好きだな」

「本当? わたしも大好き。音楽もいいけど、ジャケットの写真が素敵なの。家には携帯プレイヤーもCDもあるけど、古いレコードもあるの。そのジャケットの写真の、髭の生えた顔が素敵で、ずっと憧れてた。大人の男の人って感じがして」

 

 気が付けば、正善と希美は並んで歩いていた。

 希美は背が高い方で、身長が165センチほどあったので、並んで話すと正善と目線がほとんど同じくらいだった。

 紺色のブレザーを着た希美と、学生服を着た正善が、並んで歩く。

 誰もが振り向く美少女で、昔から男子生徒の目を引いていた希美が、突然話しかけてきた正善のことを受け入れて、親しげに会話をしたのは、正善の率直な態度と、絶対に人を傷つけない優しさを感じ取ったからかもしれない。

 三年生の時に引っ越してきた希美は、まだこの町で友達が少なかったのも、この不器用な少年を、希美が新しい友達として受け入れた理由かもしれない。

 

 夢中で会話を続けるうちに、いつの間にか希美の自宅近くまで来ていた。

 畑の中に立つ一軒の真新しいマンション。そこが希美の一家が住んでいる場所だった。

 正善の家までは、まだここから十分ほども歩かなければいけない。

 自転車通学が許可される範囲のぎりぎり外だったから、正善はいつも律儀に三十分近くかけて徒歩で学園に通っていた。

「このマンションの二階に住んでるの。またお話しましょ、川辺くん……ごめんなさい、名前もう一度……」

「まさよし……川辺正善!」

「またね、正善くん!」

「うん、またね、高木さん」

「希美でいいよ。の、ぞ、み。忘れちゃダメだぞ」

「うん、の、希美……さん」

 マンションのゲートの中に希美が消えていく。

 夢のような時間が過ぎた。

 家は近くはなかったが、帰る方向が一緒だったのが幸いした。

(希美……のぞみ……希美ちゃん……なんて素敵な名前なんだ!)

 

 それから、希美の存在は正善にとって、その名前の通り、生きる希望になった。

 正善と希美はテニス部の練習の後、帰り道で待ち合わせて一緒に帰るようになり、二人はテニスのことだけでなく、音楽のこと、希美が引っ越す前に住んでいた町のこと、そしてお互いの子供の頃のことまで、とめどなく話し合った。

 けれどもそんな無邪気で幸せな時間が、長くは続かないことに、二人はまだ気が付いていなかった。

 

 (体験版ここまで)

 表紙絵 ジュエルセイバーFREE http://www.jewel-s.jp

 

 

いかがでしょうか。

久しぶりに書きました、10代カップル、女子高生の寝取られ物語。

二人の出会いは純愛にふさわしく、あどけない、微笑ましいものになっています。

いじめられっこの主人公、正善と、テニス部で一番の美少女、希美。

この二人が、どのように愛を育み、そして周囲の男達に寝取られていくのか。

 

「前編」では、テニス部を舞台として、序盤は特にテニスの試合の様子など、まるでスポーツ漫画かのように熱戦が描かれ、エロシーンが出て来るまでがちょっと長いですが、ヒロインはやがて脱がされ、抜けることの出来ないセックス地獄へと堕ちていきます。

「後編」では、ついに夫婦となった正善と希美が、さらなる浮気と寝取られに直面し、寝取られ妊娠、そして出産へと向かっていきます。

そんなヒロインを、主人公の正善は受け入れることが出来るのか。そして、愛し合う二人は寝取られという現実にどう向き合っていくのか。

 

ひたむきな二人の姿に、ヒロインの淫乱さに、興奮していただけるだけでなく、きっと感動していただけるものと思います。

純愛高校生カップルが、夫婦となり、寝取られ性癖を持つ変態夫婦となるまでを描いた感動の長編。

どうぞご覧になってみて下さい。