戦争と寝取られ
世界のどこかで戦争が起きた時、それに伴う性暴力が報道されることがあります。
戦争には性暴力がつきものです。
紛争地域では兵士達が女性をレイプし、多くの女性が望まない妊娠をし、あるいは陵辱の上で殺害されます。
このような戦争による性暴力も寝取られと呼べるのでしょうか。
何人もの兵士達が民家に侵入し、そこにいた夫を銃で撃ち殺し、集団で妻をレイプする。
そこにはエロスよりも陰惨さが漂います。
このような状況の中で、NTRの興奮を味わうことは、たとえ寝取られの愛好者であっても困難です。
戦争による性暴力の中に、寝取られの興奮を見出せないのは、そこに男と女の関係性が存在しないからではないかと思います。
寝取られ夫が、愛する妻を他人にヤられて興奮してしまうのは、妻が感じてしまっているからです。
たとえ行きずりの相手であったとしても、妻が一人の女として、相手の男に魅了され、そのテクニックに夢中になってしまっているからです。
夫よりも魅力のある男。
夫よりも強い男。
そして夫よりも、大きなオチ○チン。
男として、夫よりも強くて優れた相手に抱かれるからこそ、妻は女として感じてしまい、そして夫は、本能的に屈服してオナニーを始めてしまうのです。
そこには、強いオスがすべてのメスをモノにするという、自然の法則に従った快感があります。
けれども戦争による性暴力の中には、このような自然の法則に則った男と女のロマンはありません。
一人の強い男によって、美しい妻が否応もなく奪われてしまうといった男と女のゾクゾクするような関係性はありません。
戦争による性暴力は、単に政治的、軍事的な力がもたらした結果に過ぎないからです。
そこにはオスとしての強さや、能力の優劣は関係がありません。
単に軍事的に勝利した側に属していた、その中でも下っ端の劣悪なオスが、戦場のストレスによって精神の均衡を失い、自らの弱さを露呈しているだけだからです。
これは政治や軍事が高度化し、銃火器やテクノロジーによって戦争が行われる現代だからこそ起きる状況です。
現代の戦争の中に、エロスはありません。
しかし、これが古代の戦争であれば、そこには血が沸き立つようなスリルと、エロスがまだ残っていたのかもしれません。
ミサイルやマシンガンではなく、まだ男達が肉弾戦によって、自らの身体で戦っていた古代。
そこにはきっと、大きなエロスが存在していたことでしょう。
小さな国同士。村と村。町と町の戦い。
力と力がぶつかり、剣や槍を振り回し、相手を打ち倒した後、戦いに勝った男達は相手を皆殺しにし、浴びた返り血も乾かぬままに村へと侵入し、たった今殺した兵士の妻を、娘を、片っ端から犯すのです。
粗末な服を引き裂き、汗と涙にまみれた女の身体を、男達は乱暴にまさぐります。体臭がたちこめ、女は泣き叫びますが、それは戦いで昂った男達の興奮を高める役割しか果たしません。
そしてたった今、夫を失ったばかりの妻の胎内に、男は容赦なく自分の精液をぶちまけます。快感に呻きながら、男が舌なめずりをすると、頬についた血の味がします。それは先程打ち倒した、この女の夫の返り血です。
夫の遺伝子が含まれた血の味を口の中に感じつつ、男は妻の子宮の中に自分の遺伝子を、溢れるほどに注ぎ込みます。それはレイプには違いありませんが、歴史的に見れば、ひとつの村、国、民族を越えた血の交わりであり、新たな遺伝子の混合です。
女は涙を流しつつも、戦いの掟の中で夫が敗れたことを感じ、勝者へのご褒美として自らの肉体を差し出し、新たな血を子孫の遺伝子の中に受け入れるのです。
古代の戦争に勝利した男達が、敗者の妻をモノにするのは、それは男としての肉体の勝利だからです。
男達が自らの肉体で戦っていた時代。
戦いは男としての強さの証明です。
それは血なまぐさく、残酷ではありますが、そこにはバイキングが各地を略奪し、命がけで戦い、殺したり殺されたりしながら女を何百人も犯して回るような、そのような本能的な興奮があったことでしょう。
けれども現代の戦争にそのような牧歌的なロマンはありません。
現代の戦争は単に軍事的な、あるいは政治的な勝利であり、オスとしての強さの証明ではありません。
そこにはロマンはなく、理不尽さと陰惨さがあるだけです。
そこに寝取られのエロスを感じることは、簡単ではありません。
戦争によって妻を男達に犯された夫が、被虐的なオナニーによって自分を慰めることは可能ですが、多くの場合にはそのような余地さえも残っていないでしょう。
私、八ヶ岳の寝取られ小説の中で、戦争による寝取られを描いた作品がひとつだけあります。
「いちばんやっちゃいけないことをやる女 野蛮人サイマンとヤトミの女たち」
がそれです。
しかし、これも現代の戦争ではなく、男達が力と力で肉弾戦で戦っていた時代の物語です。
力と暴力に勝る野蛮民族サイマンの男達が、戦いに勝利し、かよわいヤトミの女たちをすべて犯してしまうという物語です。
私はこの作品を、最悪のバッドエンドを描いてみたいという理由で書き始めました。
そして戦争と暴力による略奪と寝取られを、敢えて描いてみようという挑戦でもありました。
その結果、思った以上に面白い物語にはなりましたが、寝取られ作品としては正直失敗作だったと感じています。
それは寝取られに至る前の男と女の関係性が、うまく描けなかったせいでしょう。
戦争の中での、血なまぐさく、暴力に満ちた寝取られも興味深くはありますが、ヤリチン男や不倫相手に、じわじわと妻の心と身体を奪われていくようなストーリー性は望めません。
寝取られのスリルと興奮を楽しめるのも、平和があってこそです。
世界が平和だからこそ、寝取られも楽しめるのです。